教育基本法に関する特別委員会(2006年11月14日)

日本の伝統文化・芸術教育について




赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 ひょっとすると最後の一般質疑の時間になるかもしれませんので、限られた時間でございますけれども、答弁者の皆さんというか、今は大臣御不在ですが、三十分でございますので、簡潔で適切な御答弁のほどをよろしくお願いしたいと思います。きょうは、公務御多忙の中、池坊副大臣にもおいでをいただいておりますので、どうかまずよろしくお願いしたいと思います。
 私はまず、今回の法改正で教育の目標を書かれた第二条のうちの第五号についてお伺いをしたいというふうに思っております。
 この第二条第五号は、日本の「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」とした。これは本当によく練られた文案だなというふうに私は率直に思うわけでございます。
 この点について、「養うこと。」とした理由について、前国会で小坂前文部科学大臣の答弁には、こうしたことについては、いわゆるグローバル化と言われる社会の中にあって、日本人が海外に出て活躍をする、そのときに、日本人のアイデンティティーとして、しっかりとした歴史観、そして伝統に対する認識、日本の伝統、文化というものをしっかりその知識を身につけていただくことが、日本を理解され、日本人が尊敬されるものだと思うわけでございます、このような御答弁がございましたが、私も、私自身の体験からこれは全く同感をするものでございます。
 私の体験といいますのは、私は、政治家になる前、三井物産の社員で、海外留学と海外赴任をいたしました。そのときに、生まれて初めて異国の地で外国人社会の中で生活をいたしました。そのときに、みずから、私自身が日本人としてのアイデンティティーとは何ぞやとか、日本の持つ伝統、文化またはその歴史についてどうなっているのかという認識を新たにしたという経験をいたしました。
 たまさか私は、実は小学校時代に、ちょっと大臣にお話をしたかったわけですけれども、小学校のときにみずから琴を勉強して、音楽の先生で、小学生に琴を教えていただいたという大変すばらしい恩師に恵まれました。茅原芳男先生という、ここに「教育流 邦楽狂師 一代記」、これは第二十八回の博報賞伝統文化教育部門を受賞された本なんですが、こういった教育を受けまして、琴とか尺八というのは見たことはあるけれども、ある意味では本物を見たことがないような世代だったんですが、それを初めて手にさわり、そして、「さくらさくら」ですとか幾つかの曲を弾けるように一生懸命指導していただいたわけでございます。私がいた海外赴任の地でも、そういったことを聞かされながら、邦楽に関する、また日本の歴史に関することを、自分自身の意見として言うことができましたし、そういった日本の伝統、文化に対して誇りを持つこともできたし、まさに今、尊重する態度も身につけることができたというふうに思うわけでございます。
 私は、本当にこういったことで、義務教育の小学校、中学校のときに和楽器の教育というものをもっとしっかりするべきだ、こういったことを導入部分として、日本の伝統、文化についての認識を深める大変重要な教育機会であるはずだという認識がございまして、こういった点についてまず池坊副大臣に、日本の伝統、文化を尊重する態度を身につけるという上で、義務教育における、今私は琴と申し上げましたが、琴などの和楽器の演奏を指導することを私自身は大変重要なものというふうに認識をしておりますが、池坊副大臣も日本の伝統、文化を担うお一人としてどのような御所見があるのか、まずお伺いしたいと思います。

池坊副大臣 今、いじめなどが社会問題になっておりますが、いじめをなくすためにも、心豊かに子供たちが生きることが必要だと思います。
 心豊かに生きること、たくさんございますけれども、その一つには、やはり我が国の伝統、文化をしっかりと受けとめ、そしてそれを、和楽器でしたら、みずから弾ける喜びということを習得することが必要かと思います。
 きょう新聞に出ておりました「和と出合う」という中で、中村吉右衛門さんが歌舞伎を子供たちに教えている。子供たちは、日本の文化を知るだけでなくて、すべて日本の伝統、文化というのは道でございますから、一つの道をきわめる。だから、感謝の心とか礼儀作法とか、それを知らない間に学ぶことができる。また、三味線を教えると、茶髪の女の子が、ギターと同じように生き生きと、自分でも弾けるんだ、そして、うるさがっている男の子たちに、静かになさい、こんなにいい音楽があるのよと言っていると。私、ちょっとそれに感動したんですね。
 ですからやはり、しっかりと伝統、文化を受けとめるとともに、お互いを認め合いながら共同して学習する場というのが必要だと思います。ですから、和楽器をともに合奏するということは大変必要だと思っております。
 今、全国の公立小中学校では必ずしも三味線だとかお琴だとかが十分ではございませんけれども、それを使うことができる人材はおりますし、また、いなければ民間の活用というのをしたらいいと思いますので、ぜひこれは、教育基本法の今審議されている中の改正にも出ておりますし、皆様がこれには賛成してくださっていると思いますので、公教育の中でしっかりとやっていきたいと思っております。

赤羽委員 今、大臣がいらっしゃらなかったときに、私みずから小学校のときに琴の演奏を教えていただいた恩師、実はきょうも来ていただいているんですが、に恵まれたということと、そういったベースがあったがゆえに、商社マンとして海外に留学また駐在をしたときに、外国人社会において私自身が日本人としてのアイデンティティーを確立することに大いに役に立った。そういった意味で、そういった重要性についての御認識をまず副大臣にお伺いをしたところでございます。
 前通常国会だと思いますが、銭谷局長の答弁で、今後は、この第二条に示された教育の目標を踏まえ、学習指導要領全体の見直しの検討の中で、各教科等にその具体的な伝統、文化の尊重について、各教科等の具体的な教育内容の中にどういうふうに生かしていくのか検討してまいりたい、このような御答弁がありました。これは大変すばらしいというふうに思っております。
 実は、今の学習指導要領、多分五年前だったと思いますが、変わりまして、初めて和楽器の教育について書き込まれたんですが、これは実は、中学校三学年を通じて一種類以上の和楽器を用いる、この一行だけなんですね。洋楽器については、小学校において、ハーモニカ、リコーダー、こういった具体的な楽器を習得することという表現になっているんですが、和楽器は、中学校で三学年を通じて一種類以上の和楽器を用いると、非常にあいまいな状況になっているわけです。
 まさに今回、法改正で伝統と文化を尊重することの意義が確認され、そういった具体的な指導方法または評価方法をどのように変えていくのかというのは大変重要な私は論点だというふうに思っておりますので、まず、現在の教育現場において、和楽器教育の現状、三学年を通じて一種類以上の和楽器を用いるというこの学習指導要領は、実際どのような現場の状況になっているのか、目標の達成度はどう評価するのかということを、局長で結構でございますので、御答弁いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 現行の指導要領から、中学校で三学年を通じて一種類以上の和楽器を用いるということにしたわけでございますが、現状を申し上げますと、各都道府県の指導主事等からの聴取でございますけれども、一年生では、大体約半分近い学校が一時間から五時間ぐらい、これは年間でございますけれども、時間を配当している。二年生では、七割ぐらいの学校でやはり一時間から五時間ぐらいの時間を配当している。三年生になりますとちょっと減りまして、四割ぐらいの学校が一時間から五時間程度。それで、六時間以上という学校も各学年とも五、六%あるという状況でございます。
 ですから、おおむね三年間で和楽器には触れているという状況はあるわけでございますけれども、まだ時間数等はそれほど十分ではないんじゃないかというふうに思っております。
 それから、使用する楽器ですけれども、これは一番多いのが琴でございまして、大体各学年五割から六割は琴を使用している。続いて多いのが打楽器、つまり和太鼓が多い割合になっております。このほかに、尺八、三味線、笛などを使っている学校が見受けられるという状況でございます。

赤羽委員 今の答弁を聞いていますと、そこそこ充実しているんじゃないかなという勘違いをさせる答弁だったというふうに思います。まさに靴の上から足をかくような答弁だなと思いました。これは、正直にやはり言った方がいいんですよ。
 これは一時間から五時間配当している、私、最初に資料を見たときに毎週のことなのかなと。これは実は年間なんですよ。今言われたように、一学年で一から五が何%、二学年でと言うと毎年やっているようでしょう。これは違うんですよ。三年間で二年のときしかやらない学校が大半なんですよ。やはり正直に言わなければいけない。それで、一時間もやっていない、まさに未履修のところが、今は答弁しなかったけれども、一学年で一時間もさわらないところが四四%、二年のときには二九%、三学年で五四%。私の認識しているのは、三学年で全くさわらない、この指導要領を無視している、履修をしていない学校は二四%あるんですよ。
 ですから、こういった現状についてまずやはり局長は逃げるような答弁をするべきじゃないと僕は思いますし、不誠実ですよ。まじめに議論をして、これだけ教育基本法の改正という大きなことをテーマとして、現実がどうなっているかということをまずブラインドをかけてしまっては、法改正に伴うまともな教育現場の変更というのはできないというふうに厳しくまず指摘しておきたい。
 それで、評価というのはどうなんですか。これで今学習指導要領が達成されている、文部科学省として、今の数字、申し上げました、大体二学年で七割弱、年間一時間から五時間、全くさわっていないのが、僕はよくわからないけれども、三割弱、こういったところで現状の学習指導要領で求めている目標はクリアされているという認識なんでしょうか。どうなんですか、何か人ごとのように聞かれているんですけれども。

銭谷政府参考人 私も率直にお話をさせていただきますが、現行の学習指導要領は平成十四年度から実施をされたわけでございます。平成十年度にこの指導要領を告示したときには、中学校の音楽教育関係者は非常に、これは大変なことになったなという感じを持ったと思います。国としても、教員の研修会等いろいろ準備を進めてまいりましたが、当初よりは和楽器の指導というのは各学校においていろいろと工夫はされてきていると思いますけれども、やはり全体としては、先ほど申し上げましたように、まだ、指導時間とかそういう点において課題は残しているというふうに思っております。

赤羽委員 ですから、まず求めたいのは、学習指導要領自体が、現状、中学校で三年間を通じて一種類以上の和楽器を用いるということ自体が、目標設定というのがちょっとあいまいだと私は思うんですね。
 私は、ざっくり言うと、簡単な曲目を弾けることを目標とするとか、そういったようなことをしないとなかなか本腰で取り組むことはできないし、もちろん、楽器の問題とか教員の配置の問題とかということの問題点はあるにせよ、せっかくのこの法改正の中で大きなテーマでありますし、それはタイムラグはあると思います。五年間で進捗状況があったと言うけれども、もう少し前に進めたかもしれないというふうなことも考えれば、私は、せめて簡単な曲目を弾けるようになる程度を目標とするというような目標を設定して、その目標に向かって、もちろん予算獲得も頑張らなければいけないだろうし、指導要領の徹底についても取り組まなければいけないと考えるんですが、副大臣、先ほどの御答弁についていかがお考えでしょうか。

池坊副大臣 議員がおっしゃいますように、ある曲目、例えば、お琴でしたら「さくらさくら」が弾けるようにというのは、高知や福島の中学校でもやっております。現実に、ちょっとお琴をさわっただけではその和楽器に対する関心は浮かんでこないと思います。一つの曲目を目標にして、それに向かってみんなが心を合わせてこそ、初めて和楽器そのものの大切さやすばらしさに触れることができると思いますから、それは大変にいい御提案だと思います。
 それで、この教科の目標設定のあり方については、現在、中央教育審議会においても専門的検討を行っております。議員がおっしゃいますように、和楽器の指導においては、簡単な曲目を弾ける程度を目標として位置づけることとしておりまして、私どもも、それに向けて、具体的に弾けるということが喜びであり、その一曲を通じなければそのものが持っているすばらしさに触れることはできないと思いますので、ぜひこれはしていきたいと思っております。

赤羽委員 前向きな御答弁を本当にありがとうございます。
 ただ、私も琴を習った経験から、「さくらさくら」というのは実はそんなに難しくないんですね。すぐ弾けるようになる。ピアノで弾くよりすごく簡単なので、子供が音楽全般に対する興味を持つという意味では、すばらしい楽器が実は日本にあるんだということをぜひ御認識をいただきたい。
 その中で、そういった目標をクリアしていく環境を整えていくために現状問題点がある。先ほどお話しございました、楽器がどれだけあるか。私の知る限りというか、余り経験も少ないわけですが、小学校、中学校に行くと、オルガンがないとかピアノがない学校というのはないですよね。必ずあるんですよ。ピアノのない学校というのはないはずです。だけれども、琴がない学校というのは大変な数ですね。音楽の先生で琴が弾ける先生というのは多分少ないと思うんですね。音楽の教員の指導要領というんですか、養成課程で、多分ピアノは必修になっていても、琴は必修になっていないはずなんです。この辺も少しは考えるべきではないかなと。教える先生がいない、楽器もない、しかし学習指導要領には一定以上の和楽器の指導をするというのは、現実の予算的な問題はあるにせよ、それは、もう少し文部科学省として踏み込んで前に進めるということが必要なのではないかというふうに思うわけでございます。
 こういった予算編成について最後に大臣にお伺いしますが、その前に私は、ぜひ和楽器の教育の振興策というか、例えば文部科学省の中で子供たちの和楽器の演奏会を開催するとか、この法改正に伴って、これからの日本の教育のあり方が大きく変わったいろいろな点の一つのシンボリックなものとして、ぜひそういったことを企画されたらどうかなと。
 先ほどの私の恩師は、実は、私に教えていただいた後この何十年間の間に、小学生、中学生のお子さんたちを五回海外の演奏旅行に引率されている。全部自費でやったというお話を聞きました。そういった経験をしたお子さんたちというのは大変すばらしい財産になったというふうに想像にかたくないわけでございますけれども、今、金がないからなかなかできないのはわかりますから、せめて今できることをやられたらどうかなと。池坊副大臣がやればマスコミも注目を集めるでしょうし、こういう企画についてはどのようにお考えか。

池坊副大臣 突然の御提案ではございましたが、私は大変賛同いたします。
 考えてみますと、ピアノのコンクールとかあるいは合唱団のコンクールというのは新聞社などもやっておりますから、行政もさることながら、新聞社などにも働きかけて、このような和楽器の演奏会をしたら子供たちの気持ちも喚起できると思いますので、これはぜひ私が、大臣の御指示をいただきながら企画をしていきたいと思っております。

赤羽委員 ぜひ文部科学省の中でお願いしたいなと思います。
 ぜひ、そういった学習指導要領を法改正に伴って変えるときに現場の皆さんの声を聞いていただきたいと思いますし、いろいろなことを、せっかくの機会ですから、ただ単に法律改正をして教育現場は全く変わらなかったのでは全く意味がないわけでありますので、まずこの邦楽教育について、このやりとりを聞かれて、伊吹大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 今の一連の御質問、答弁を伺っておりまして、現在提案しております教育基本法には、日本の伝統、文化を尊重するということをわざわざ新しく記述しておりますから、この法案をお認めいただければ、先生がおっしゃっているような方向に行きやすい理念法ができるということだと思います。
 その上で、やはり教える人がいなければだめなんで、これは教育課程の中に和楽器を履修されるということを位置づけておりますから、ただ、邦楽というと、邦楽界は皆さん一斉に御賛同になるんですよ。その中でどの楽器というと、なかなかこれは、私どものやっているのが一番いいという方が次々出てきますので、どうバランスをとるかということはあると思いますが、この法案がお認めいただければ、先生がおっしゃったような、単に言葉だけではなくて、現実的にそれができる予算あるいは指導の先生方の段取りもつけながら、ぜひ中教審の御意見を伺っていきたいと思います。

企業奨学金の拡充について




赤羽委員 どうもありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、教育の機会均等について、第四条の第三号について、「経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。」こうあります。これはまさに我が公明党の考え方と一緒でございまして、連立与党に参画をしてから、やはり、優秀な子だけに奨学金が出るのではなくて、まじめに学校に行きたい、お父さんがリストラになっても学校をやめなくてもいいような現場をつくりたいということで、奨学金の拡充を求めてまいりました。
 七年前は四十万人程度の学生に奨学金が支給されておりましたが、今年度の予算では百十万人の支給になった。大変すばらしい成果であると思いますが、私は、大学なんかはすべてもう奨学金で賄うことができる、勉強だけ一生懸命やれる環境をつくるということが一つの理想の姿であるというふうに考えておりますが、この点について、我が党の教育政策を主導してきた池坊副大臣に、現状の認識とこれからのお考えをまずお伺いしたいと思います。

池坊副大臣 議員がおっしゃいますように、公明党の力によって、平成十一年度六十四万人だった貸与者が平成十八年度には百九万人になりました。今まで成績優秀な人しか与えられなかった、貸してもらえなかった奨学金は、今や、本当に学びたいというまじめで誠実な子供たちは借りられるようになりました。この有利子をおつくりになった公明党、私も入っておりますのですが、感謝しております。子供たちに大きな希望を与えたというふうに私は感じております。
 本来、議員がおっしゃいますように、私も、自立の観点から、親の経済事情にかかわりなく、子供たちが望むならば、すべての子供たちが自分の力で学べるようなシステムにすべきというふうに考えております。それが本来の姿ではないかというふうに思っておりますので、これからも奨学金は一生懸命頑張ってまいりたいと思っております。
 そして、日本学生支援機構の奨学金だけでなくて、地方公共団体、公益法人、大学など約二千八百実施主体で年間二十七万人の方に対して奨学金が、給与制、貸与制それぞれがございます。そういうことのPRももっともっとしていかなければならないと思いますが、教育の格差を引き起こさないために、私は、この奨学金制度というのは絶対に必要で、これからも拡充する必要があるというふうに考えております。

赤羽委員 ただ、これも財政的な限りがあるというのは私もよくよく承知をしております。私、日本育英会の奨学金も自分自身もらっておりましたが、同時に、当時は旭硝子の奨学金もいただいておりました。これは、毎月一回、会社の人事部に行かなければいけなくて、行くと、会社の仕組みというか、高校時代もそうですが、大学時代もなかなか学ぶことのできなかった現場社会の、実業界の一端に触れる一つの機会も与えられたと思いますし、自分で勉強していく上で大いに役立った。
 私は、日本の企業というのはもっと社会に利益を還元するべきであるし、社会における公共的な役割というのをやはりもっと果たすべきだというふうに個人的には思っておりまして、もっと民間発のスカラーシップをつくるように、やはり金がないんですから、働きかけるということは幾らでもできると思いますし、ぜひ大臣が音頭をとって、経団連を初め経済団体にそういったことを促す、そして、それをしたことについてはもっと顕彰するとか、旭硝子の奨学金も、その奨学金をもらっている学生を自分の企業では就職させない、青田刈りじゃないという、何か非常にある意味では健全なことで行っていました。
 私は青田刈りにつながってもいいと思うんです。やはり、産官学と言われている中で実業界と大学がもっと近くなる、そのために金をどんどん惜しまずに優秀な学生を育てていくということが企業の側にあってもいいと思いますし、そういった意味で、日本の限られた財政状況の中ということも考えれば、もう少し民間の力を活用すべきというふうに思いますが、大臣の御決意を伺わせていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 まことに先生のおっしゃる御提言は時宜を得たものだと思います。
 事実、幾つかの大学では、講座そのものを寄附しておられる企業もあるんです。学生の支援については、企業には、一般の法人税の損金に算入できる寄附枠に加えて、特定公益増進法人に寄附をなすった場合は、これは別枠として法人税計算上の損金に計上できる仕組みがありますので、ぜひ企業も、企業の商品を買ってくれる人があってこそ成り立つわけですから、社会還元ということを今以上にやっていただくということは、そういう企業こそまさにブライトな企業であるという社会的な評価も、ぜひ国会議員全員が定着させるように努力をしていただきたいと思いますし、私も全く異存はございません。

赤羽委員 ぜひ、経団連や日商等々にも働きかけをお願いしたいと思います。
 最後、限られた時間でございますが、第二条第二項のキャリア教育、職業教育について、今回文科省は、中学校の体験学習、これは兵庫県でもトライやる・ウイークといったことを始めておりまして、大変そういった意味では効果のあるというのは、私、我が子が二人おりますので実感としておりますが、しかし、中学生時代に職業観というのは、学ぶのは少し時期尚早かなと。社会の成り立ちですとか職業とはですとか、そういったことを勉強するのは、やはり高校ぐらいじゃないかと。
 今の高校生は、私の息子は高校二年生なんですが、そんなこともほとんどわからずに、一方で物すごい難しい三角関数を初め、あんなものは僕は卒業してから一回も使わなかったなと思うようなことを詳しく勉強させられていて、一方では何か社会のことをわからずに、数学が得意な子は理科系に行き、数学が苦手な子は文科系に行き、理科系の中で優秀な子は医学部に進む、そしてお医者さんが、適格性なんか何も問われないで実は自分の進路が決まってしまっている。こういったことというのは、非常に今の社会のひずみを生む原因になっているのではないかということを、私自身もそうですが、自分の子供の今の現状を見て、率直に言って感じるわけです。ですから、このキャリア教育について、高校時代の年についてどうかと。
 これは、高専というとすぐ出てくるんですけれども、高専はそれでいいと思うんですが、普通高の学生たちに、もう少し職業とはというか社会の仕組みについて学ばせなければいけないというふうに思うんですが、このことについて最後に御所見を賜り、終わりたいと思います。

伊吹国務大臣 大変大切な御指摘だと思います。
 そして、高等学校で企業を訪問するとか、あるいは職業を体験するとか、まさにゆとり教育と言われるのはそういうことをやっていただくための時間をとっているわけでございますので、午前中、民主党さんの御質問にもいろいろありましたけれども、ゆとり教育のあり方というものは少し見直さないといけない。まさに先生がおっしゃったような意味での、目的に合致したゆとり教育をやはり考えていくということだろうと思います。

赤羽委員 御見識の高い伊吹大臣みずからまず高校に乗り込んでいって授業をやるとか、外交官が外交の話をするとか、お金のかからないことから始めるということをぜひ強く要望、お願いして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。