――自民圧勝の参院選の論じ方――

新聞社にとって「選挙はお祭り」といわれる。政治部だけでなく社会部、経済部、地方機関など取材部門はもちろん、どれだけ多くの当選者数を入れられるかは整理部門の力であり、さらにはタイトなスケジュールでの印刷、輸送、最期は販売店の配達能力までも問われる総力戦だからだ。朝刊の配達時には、テレビなどで結果が判明しているのだが、新聞社にとっては軽視できない一大イベントなのだ。

21日に投開票された参院選。戦前の予想通り、自民が圧勝し国会の衆参のねじれが解消された。在京各紙は22日朝刊で「お約束」のように通常の2倍のスペースで社説を掲載、選挙結果を論じた。

各紙に共通した、国民が「安定した政治を求めた結果」という点だが、「安定した政治」が具体的には何を指すかはあいまいだ。

選挙前から「安倍応援団」的色彩の濃かった産経は「『強い国』へ躊躇せず進め」と見出しを付け、社会保障改革、憲法改正、成長戦略、原発再稼動など、安倍政権が取り組むべきテーマを列挙した。中でも社会保障改革については「選挙後直ちに取り組まなければならない」と強い調子で論じていたのが印象的だった。また「アベノミクス」支持の論調が目立つ日経は、大勝で自民党に「古い体質の復活」「既得権益の保護・分配への志向」「偏狭なナショナリズム」という三つのバネが働くことを懸念した。

朝日、毎日、読売、東京の4紙に共通したのは、表現は違っても「自民党は数におごるな」という論調だ。「白紙委任したわけではない」(東京)、「フリーハンドを与えたのではない」(朝日)といった表現で政権をけん制した。国民が圧倒的に支持した自民に、正面から注文は付けにくいための書き方といえるだろう。

一方、各紙が厳しい目を向けたのが民主党だった。「退潮は目を覆うばかりだ」(朝日)、「党の存在意義すら問われる」(毎日)、「次期総選挙では2大政党の一角から転落しかねない」(読売)「稚拙で不誠実な政権運営に対する『懲罰』的投票が、政権転落後も続いている」(東京)、「中道リベラルで再分配志向の政党としての路線をはっきりさせるしかないだろう」(日経)、「党再生がまったく軌道に乗っていないことを露呈した」(産経)という具合で、同情的な論調は皆無だった。

各紙の社説からは、予想されていたこととはいえ、自民の「一人勝ち」をどう評価していいか、戸惑っている様子も垣間見えた。短時間での社説執筆の難しさなのかもしれない。