総務省が発表した2012年の就業構造基本調査結果によると、パートや派遣など非正規の労働者は2042万人で、初めて2000万人の大台を超えた。これは前回(2007年)調査に比べ152万人の増。労働者(雇用者)全体に占める割合も38.2%で、前回より2.7ポイント増えている。非正規労働は、低賃金のうえ雇用が不安定なため、政府は正規労働へ移行しやすいよう制度改革を進めているものの、労働政策に意欲的だった民主党政権でも、その効果が出ていないことが分かった。一方、調査では、25~39歳の女性のうち働く人の割合が69.8%と過去最多になったことも分かった。高齢少子社会になったわが国の就業構造が大きく変化していることをうかがわせている。
調査は1956年から行われており、1982年からは5年ごとに実施される。無作為に選んだ全国の47万世帯の15歳以上の約100万人が対象で、今回は昨年10月1日現在で行われた。
非正規労働についてみると、1992年調査では1053万人(21.7%)だったから、20年でほぼ倍増した。これは、リーマンショック(2008年)以降、企業が正社員の採用に消極的になり、景気動向によって解雇できるパートや派遣の比重を高めたことや、自動車など製造業の工場が海外に移り、雇用が減少。パート、派遣が多い小売・サービス業で働く人が増えたことなどが背景にあるとみられている。
一方、調査では女性の働き方の変化が顕著になった。「働き盛り」といわれる25~39歳の有業率は前回調査から3ポイント上昇している。過去の調査では、この世代は結婚・出産・育児で職を離れる傾向が強く、20代前半や40代に比べ有業率は低かった。しかし、晩婚化や経済的理由から、この世代の離職者が減少していることをうかがわせている。これまでは有業率が最も低いのは30~34歳だったが、今回の調査では35~39歳に移っている。また、女性の非正規で働く人の割合は57.5%で、男性の22.1%を大きく上回っており、働く女性の半数以上は非正規だった。
日本経済の持続的成長には「女性の活用が不可欠」という見方が強まっている。安倍内閣も成長戦略に勤務地や労働時間を限った「限定社員」制度を盛り込み、普及を図っているが、まだ成果は見えてこないのが実情だ。
労働ジャーナリストは「女性の労働の多くが非正規では意味がない」と指摘したうえで、「税金の配偶者控除や年金など、『妻は家庭を守るべきだ』といわんばかりの制度が多い。ここを変えないと女性の労働情況は変わらないだろう」と話している。