金融機関に預けっぱなしになっている「休眠口座」を活用する計画が再び動き出している。毎年約500億円ずつ増えるといわれる巨大資金を、福祉やベンチャー企業支援などに活用する計画だ。民主党政権下では閣議決定までされていたが、政権交代で立ち消えになっていた。今回は与党を中心に議員立法で実現を目指す動きがでている。しかし、ハードルも多いのが現状だ。
「休眠口座」とは、金融機関の払い戻しや預け入れのない口座のことで、銀行は商法で5年以上、信用金庫などは民法で10年以上取引がなければ時効となり、預けていた人の権利は消滅する。また、定額、定期郵便貯金は満期後20年経過し、催告書発送後2カ月たっても払い戻し請求がないと権利は消滅する。
しかし、現実には多くの金融機関は10年以上取引がなく、連絡が取れないものを「休眠口座」として扱っているが、その後であっても請求があれば支払っているのが現実だ。
「休眠口座」が生まれる理由はさまざまだ。転居や結婚で新口座を開設し、従来の口座を放置したケースや、印鑑、キャッシュカードを紛失し回復手続きを取らなかったケース、残高が少なくATMを利用できないケースなどがあるとみられている。
民主党政権下の2012年には「休眠口座」の有効利用が検討され、7月には「日本再生戦略」に盛り込まれ、閣議決定された。この時の推計(2010年末)では、毎年、金融機関の「休眠口座」は約1300万口座、農漁協系金融機関58万口座が発生しているという。払い戻し請求分を引くと約500億円残る計算だ。
「休眠口座」の公的活用は、外国でも行われているが、「利用者の同意がないままの流用は金融システムへの信用を損なう」という慎重論も強い。
今回、再浮上した「休眠口座」活用では、①休眠口座を国の預金保険機構に移管し、機構が管理②その後払い戻し請求があった場合には金融機関が対応――が柱だが、活用先をだれが決めるのかなど細部の調整は難航している。目的も、福祉、東北大震災の被災者支援、ベンチャー企業支援など多岐にわたるが、無利子供与なのか低利融資なのかなども決まっていない。経済ジャーナリストは「総論賛成、各論反対という感じだ。年間500億円というのは、かなりの金額で、使われ方のチェック体制も課題になる。そのための組織をつくるのは本末転倒だし、まだまだ解決すべき問題は多い」と話している。