政府の経済財政諮問会議専門調査会の「選択する未来」委員会(会長・三村明夫日本商工会議所会頭)は、深刻な人口減少に対応するため「子どもを産み育てる環境の整備により50年後に1億人程度の人口保持」を中心にした中間報告「未来への選択―人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築」をまとめた。諮問会議の「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に盛り込む。政府が人口について具体的な数値目標を掲げるのは異例。このほか中間報告には、15歳から65歳未満の「生産年齢人口」を70歳まで引き上げることや、1人の女性が生涯に産む子どもの数に相当する合計特殊出生率を引き上げることも盛り込まれており、今後、各方面で議論になりそうだ。
国立社会保障・人口問題研究所の統計では、日本の人口は1億2730万人(2013年)だが、年々減少し2048年には1億人を割り込み、2060年には8674万人にまで減少するという。65歳以上の高齢者が人口に占める割合も、2013年の25.1%から60年には39.9%に跳ね上がる。5人に2人が高齢者という「超高齢社会」になるわけだ。
このため中間報告では「出産・子育て支援も社会保障の柱という認識を改めて共有すべきである」と指摘。そのうえで「資源配分の重点を高齢者から子どもへと大胆に移し、出産・子育て支援を倍増させるなどによる、出生率の回復に成功した諸外国にならって充実する」とした。
注目されるのは「生産年齢人口」の考え方の変更だ。中間報告では「過去10年余りの期間で高齢者の身体能力は5歳程度若返っている」とし、「70歳までを働く人(「新生産年齢人口」)ととらえ直し、仕事や社会活動に参加する機会を充実」とした。
一方、合計特殊出生率については、数値目標こそ見送ったが、「出生率回復が10年遅れると50年後の人口はさらに300万人減少する」として、早急な回復の必要性を強調した。
しかし、こうした提言には異論も多い。ジャーナリストは「70歳まで働くといっても働き口はあるのか。65歳定年制すら満足に実現していない」と指摘。別のジャーナリストは「子どもを産む、産まないは個人の選択であり、国家が口をはさむべきではない。出生率が回復したというフランスでは財政負担が問題になっている。そもそも子ども手当てをバラマキと批判して廃止したのは今の政府ではないか」と批判する。
人口推計は統計の中では確実な見通しと言われている。人口減は早くから指摘する声があったが、歴代内閣は問題を先送りしてきたといえる。過去のつけが顕在化したということなのかもしれない。