衆議院本会議(2015年1月27日)代表質問

赤羽一嘉君 公明党の赤羽一嘉でございます。
私は、公明党を代表し、平成二十六年度補正予算案に関し、総理並びに関係閣僚に質問させていただきます。(拍手)
初めに、シリアにおける邦人拘束事案についてお尋ねします。
今回の事案は、許しがたい暴挙であり、こうした残忍な行為を繰り返すテロ組織を断じて許すことはできず、強く非難いたします。
政府においては、あらゆる手段を講じて、国際社会との連携を強め、とらわれた邦人の安否確認と早期解放に全力で取り組んでいただきたい。与党としても、政府の対応を全面的に支援するものであります。
安倍総理の御決意を伺います。
昨年十二月に行われた衆議院総選挙では、国民の皆様から公明党への多くの御支持を賜り、自民党、公明党の連立与党に対し、引き続き政権を託していただきました。
この結果は、自公政権、安倍内閣が進めてきた、デフレ脱却を目指しての経済再生、東日本大震災の復興の加速化、社会保障の充実などへの信任であると同時に、諸施策をさらに前に進めよとの国民の皆様の叱咤激励であると重く受けとめております。
公明党は、こうした国民の皆様の御期待に応えるべく、責任ある政権与党として、「大衆とともに」の結党精神を胸に、生活者の目線に立った施策を断行し、地方経済の活性化や、厳しい経営環境が続く中小企業、小規模事業者の皆様のところにまで恩恵が行き届く経済の好循環の実現に全力を尽くしてまいります。
政府がこのたび取りまとめた総額三・五兆円規模の地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策は、一、地方創生、二、消費喚起、三、防災・減災、以上三分野において、公明党議員が全国の現場を回りながら聴取してきた要望に応える形での、思い切った対策が用意されたことを評価いたします。
以下、この三分野について、それぞれ具体的に質問いたします。
まず、地方創生について伺います。
現在、多くの地方では、若年層が東京圏に流出し、人口の減少が地域経済の停滞につながり、その結果、生活に必要なサービスの低下や働く場が失われ、さらなる人口減少を招く悪循環に陥っています。
この悪循環を断ち切るために、一、地方での安定した雇用の創出、二、東京一極集中の是正、三、若者の結婚、出産、子育ての希望の実現、四、時代に合った地域づくりの四つの柱から成る総合戦略の着実な遂行が重要であります。
補正予算の目玉の自由度の高い地方創生先行型交付金一千七百億円の円滑な実施で、地方版の総合戦略の策定、UIJターンの促進、若者の定着のための地域しごと支援事業の推進など、地方が主体となって、各地の実情に応じて自由に推進していくべきです。
地方創生を進める上で重要な視点は、地域で暮らし、地域を担っている人が主役だということです。住民がこの地域に住んでよかったと実感できる、人が生きる地方創生の実現が求められております。
人が生きる地方創生実現に向けての安倍総理の今後の取り組みと御決意をお伺いいたします。
また、地域経済を支える中小企業、小規模事業者の潜在力を最大限に生かすことも、地方創生の大きな推進力です。
そのため、産学官と金融機関が連携し、農林水産品や伝統技術・文化等の全国各地に眠る豊富な地域資源をブランド化し、販路開拓までの支援が重要です。
これまでも、広島県熊野の化粧筆のように、書道用の毛筆を転用して大成功をおさめた例も少なくありませんが、我が国の地方にはまだまだ大きな可能性を秘めた地域資源がたくさんあると認識いたします。
例えば、世界で最も有名な神戸ビーフは、実は本格的な輸出は始まったばかりで、輸出量も微々たるものであります。我が国の食肉処理施設の整備を進めて、輸出先国の施設認定を取得するなどの対策を国が主導して講じれば、飛躍的な発展が期待できます。
地域に眠るジャパン・ブランドの世界ブランド化に向けての取り組みに対する安倍総理の見解を求めます。
また、観光産業の振興は、地方創生を進める上で、大きな力になります。
訪日外国人旅行者数は、一昨年、初めて一千万人を突破し、昨年は一千三百万人を超え、着実に日本ファンがふえています。私の地元の有馬温泉にも、香港、台湾、シンガポール、タイなどのアジア各地域からのリピーター客がとみにふえております。
二〇二〇年に二千万人の高みを目指すためには、全国津々浦々、魅力ある各地域へ観光客を呼び込むための戦略的な取り組みや、各国のビザの緩和、撤廃などが非常に重要と考えます。
太田国土交通大臣の取り組み方針と御決意をお伺いいたします。
次に、消費喚起について伺います。
補正予算にある地域消費喚起・生活支援型交付金二千五百億円は、プレミアムつき商品券の発行支援や寒冷地での灯油の購入補助など、地域や事業者の創意工夫を促し、魅力ある地域の再生、消費喚起にとって重要な施策が盛り込まれております。
内需の喚起の柱として、経済波及効果の大きい住宅市場活性化策は重要です。
補正予算に計上された住宅ローンの金利引き下げや、省エネ性能のすぐれた住宅の建設、リフォームに対するエコポイント付与制度、そして平成二十七年度税制改正に盛り込まれております親や祖父母からの住宅資金に係る生前贈与の非課税枠の拡大は、大きな消費喚起が期待をされております。
一方、消費の喚起には、何より実質賃金の上昇が重要です。
昨年に引き続き、政労使が一致協力し、企業収益の増加を雇用の拡大、賃金上昇へとつなげ、消費、投資の拡大によりさらに企業収益をふやす、そして、下請企業に対する取引価格の適正化などを通じて、経済の好循環を確実なものにする必要があると考えます。
とりわけ建設業は、長きにわたる公共投資の削減により業界が疲弊し、就業者数は、ピーク時の六百八十五万人から五百万人を割り込むまでに激減しています。
担い手の確保、育成に向けて、賃金水準の上昇、社会保険の未加入対策、そして、適正な利潤が確保できるよう、ダンピング対策の強化や、発注、施工時期の平準化等の対策が求められます。
太田国土交通大臣は、就任以来、額に汗して真面目に働く人が誇りを持てる社会が大事だとのかたい信念に基づき、公共工事設計労務単価を数次にわたって見直し、その結果、建設現場労働者の賃金水準は増加基調となり、労働者数も年齢構成も改善の兆しが顕著となっていることは、高く評価されるべきです。
さらなる担い手の確保、育成が進むよう、労働条件の向上に向けての太田国土交通大臣の取り組みと御決意を伺います。
次に、防災、減災について伺います。
六千四百名を超える犠牲者を出した阪神・淡路大震災から、一月十七日で二十年を迎えました。
この大震災のつらく悲しい教訓を契機に、我が国の防災、復興支援策は、被災者の目線に立ったものに改善され、自助、共助、公助の役割も明確となり、本格的ボランティア支援活動も誕生いたしました。
例えば、建築物の耐震基準の見直しや耐震補強支援策が着実に前進し、避難所となる全国の学校の耐震化は、平成十四年、公明党の提案で全国の学校の耐震診断を実施、その後、毎年、耐震化の予算が確実に計上され、公立小中学校の耐震化率は、いよいよ平成二十七年度末にはほぼ一〇〇%となります。
また、私有財産の再形成につながるという理由で断固として認められなかった被災者への現金支給も、私自身、議員立法に取り組ませていただき、結局、十二年間という歳月を費やしましたが、平成十九年、何にでも使える最大三百万円の生活支援金を所得制限なしで支給することができる改正被災者生活再建支援法を制定することができ、東日本大震災の約二十万の被災世帯に総計三千億円を超える生活再建支援金を支給させていただくことができました。
しかしながら、防災政策に終わりはありません。
全国各地で激甚化するさまざまな自然災害が多発し、今後も南海トラフ地震や首都直下地震等の巨大自然災害の発生が予想される今こそ、防災・減災等に資する国土強靱化基本法にのっとり、全国全ての地方自治体で、国、地方、民間が一丸となって、地域の実情に合った、ハード、ソフト両面からの事前防災、減災に万全な対策を講じるべきと考えます。
安倍総理の御見解を求めます。
また、東日本大震災復興加速化のための与党の第四次提言にあるように、災害被害を最小限度にすることを目的として、災害が起きてから体制を整えるのではなく、平時にあっても、救助、復旧に関する研究、機材の開発、訓練など、事前の備えとして専門家集団を育成し、災害時には、動員、指揮命令できる権限を有する緊急事態管理庁の創設を至急検討するべきです。
なお、その際、リスクを分散するために、首都圏以外の地域に設置することが重要と考えます。
安倍総理の前向きな御発言を求めます。
最後に、東日本大震災からの復興について伺います。
間もなく、発災から丸四年が経過します。
平成二十七年度は、集中復興期間の最終年度を迎えます。平成二十八年度以降の国の取り組み姿勢と財源などについて、被災自治体等が安心して復興に取り組むことができるよう、発災から四年を迎える本年の三月十一日までに大枠の方向性を示すことが、被災者に寄り添う政治であると思います。
被災自治体からも、安倍総理の決断を求められています。答弁をお願いいたします。
次に、福島の再生について伺います。
福島第一原発の廃炉・汚染水対策は、国が前面に立つ体制となって以来、四号建屋の使用済み燃料棒の取り出しも予定より早く無事完了するなど、多少の計画の前後はあるものの、着実に安定化しています。
昨年四月一日には、事故発生後初めて避難指示区域の指定解除が田村市都路地区で実現し、待望のふるさと帰還が開始されています。
今後の被災者の円滑なふるさと帰還を促進するために、福島復興再生特別措置法の改正及び新たな帰還のための交付金等の創設は欠かせません。地元の要望も十分に踏まえつつ、早期の成立を期待するものであります。
安倍総理の御答弁を求めます。
また、ふるさと帰還の促進には、被災地域での新たな雇用の創出と、ふるさとの将来に対する夢と希望が必要です。浜通り地域の将来を描いた福島イノベーション・コースト構想は、被災地の希望のシンボルであります。
先日、安倍総理のリーダーシップのもと、ロボット革命会議にて、安全な廃炉のための最先端の遠隔操作ロボットや飛行ロボットの開発導入に資する実証実験フィールドを福島県内に設置すること、また、世界じゅうの最先端のロボットを集結させて競い合うロボットオリンピックを二〇二〇年に開催することを決定されたこと、感謝の思いを持って高く評価いたします。
福島イノベーション・コースト構想の具体化は、かなりの時間を要する大型のプロジェクトであります。どうか安倍総理の強いリーダーシップで本件を推進していただきたいと熱望いたします。
安倍総理の御決意を伺わせていただきます。
本年は、日本経済の好循環を実現し、本物の成長軌道に乗せる正念場であります。
日本の産業を支える中小企業、小規模事業者が元気になり、安定した雇用が生み出され、誰もが将来に夢と希望を持てる社会、高齢者の皆様が安心して暮らせる社会実現のためのまず第一歩として、平成二十六年度補正予算案を早期執行することが肝要であることを再度強調して、公明党を代表しての私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
内閣総理大臣(安倍晋三君) 赤羽一嘉議員にお答えをいたします。
シリアにおける邦人テロ事件への対応についてお尋ねがありました。
ISILによる卑劣なテロは、言語道断の暴挙であり、強く非難します。
政府としては、人命第一の立場に立ち、これまで培ってきたあらゆるチャンネルを最大限に活用し、人質の安否確認及び早期解放に向けて全力を尽くしているところであります。
私自身、中東訪問中に、また帰国してからも、関係各国の首脳との間で電話会談を行い、情報収集及び早期解放について最大限の協力を要請いたしました。
極めて厳しい状況ではありますが、関係各国と一層緊密に連携しつつ、人質の早期解放に向け、全力を尽くしてまいります。
地方創生に向けた決意についてお尋ねがありました。
地方創生では、人が生きがいを持って生活し、この地域に住んでよかったと実感できる地域社会を目指すことが必要です。
このため、地方にやりがいのある仕事をつくり、若者や地域内外の有用な人材の地方への移住、定着を促進することが重要です。
この理念のもと、昨年末策定した国の総合戦略に盛り込んだ施策を活用しつつ、各地域の自由な発想や創意工夫を生かした、人が主役の地方創生の推進を支援してまいります。
地域資源のブランド化についてお尋ねがありました。
今回の経済対策において、地域資源を活用したふるさと名物の開発や国内外の販路開拓に取り組む中小企業、小規模事業者を支援するとともに、ふるさと名物商品・旅行券による消費喚起を行うこととしております。
これに加え、本国会に中小企業地域資源活用促進法の改正法案を提出し、中小企業、小規模事業者による地域資源のブランド化の取り組みを強力に推進してまいります。
事前防災、減災の必要性についてお尋ねがありました。
東日本大震災が発生し、首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念される中、国土強靱化は、我が国にとって焦眉の急であります。
政府としては、昨年六月に、地方自治体が国土強靱化地域計画を策定するためのガイドラインを示すなど、さまざまな取り組みを行っているところです。
今後とも、地方自治体等と協力しつつ、ハードとソフトを組み合わせながら、優先順位をつけて、災害に強い国づくりを計画的に進めてまいります。
緊急事態への対処に係る組織体制についてお尋ねがありました。
政府の危機管理体制のあり方については、現在、関係省庁の副大臣等による検討会議において精力的に検討を行っているところであります。
今後、主要各国における危機管理体制も参考にしながら、政府として最も総合力が発揮できる体制について、本年度内を目途に成案を得るべく検討を進めてまいります。
集中復興期間後の復興への取り組みについてお尋ねがありました。
これまで、被災者の方々が一日も早く安心して暮らすことができるよう、住宅再建や産業、なりわいの再生などに全力で取り組んでまいりました。
平成二十六年度補正予算及び平成二十七年度予算においても、復興の加速化を大きな柱の一つと位置づけ、重点化しており、まずは、これらの成立に全力を尽くします。
集中復興期間が終わっても、私たちは決してとまりません。平成二十八年度以降についても、被災者の方々の心に寄り添い、しっかり対応してまいります。
福島復興再生特別措置法の改正についてお尋ねがありました。
住民の方々の帰還を促進するため、環境整備を加速化することが大変重要であると考えます。
現在、福島県からの要望も踏まえ、当分の間帰還が困難な市町村に復興拠点を整備するための制度や交付金の創設等を内容とする福島復興再生特別措置法の改正法案の策定に向けて、必要な準備を進めています。早期に国会に提出するよう全力を挙げております。
福島イノベーション・コースト構想についてお尋ねがありました。
福島の再生に向けて、地域の再生の道筋を示しながら、雇用を生み出す新しい産業基盤を構築し、産業復興を図っていくため、赤羽議員には、原子力災害現地対策本部長として、福島イノベーション・コースト構想を取りまとめていただきました。
その一環として、先週取りまとめたロボット新戦略においては、福島浜通りにロボットの実証区域を設けることを明記しました。
本構想は、地元からの期待も強く、絵に描いた餅にならないよう、実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣太田昭宏君登壇〕
国務大臣(太田昭宏君) 赤羽議員から、全国各地域に訪日外国人旅行者を呼び込むための取り組みについてお尋ねがございました。
二〇一四年の訪日外国人旅行者数は千三百四十一万人となりましたが、二千万人達成のためには、現在、いわゆるゴールデンルートや東京周辺に集中している外国人旅行者を、全国津々浦々、各地域へ呼び込む必要があります。
そのためには、各地域が連携して広域的なルートを形成し、点から線、線から面へとネットワーク化していくことが重要であります。
また、地酒や和食など、各地域に豊富にある観光資源を徹底的に磨き上げ、日本ブランドとして戦略的なプロモーションにより世界に発信していくことも重要であります。
あわせて、地方における免税店の拡大や多言語対応の改善強化、無料WiFi環境の整備など、訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備のための取り組みが求められます。
今後とも、こうした取り組みを政府一丸、官民一体となって深度化し、加速化していくことにより、二千万人の達成を実現してまいります。
次に、建設業において、担い手の確保、育成に向けた労働条件の向上についてお尋ねがございました。
近年、建設投資が急激に減少する中、地域の建設企業は赤字受注等により経営環境が悪化をし、その結果、技能者の賃金低下や若年入職者の減少等、構造的な問題に直面をしております。
建設産業の担い手を確保するためには、まずは処遇等の労働条件の向上が不可欠です。
これまで二度にわたって公共工事設計労務単価を大幅に引き上げてまいりましたが、引き続き、建設労働市場の実勢を反映するため、先日、労務単価の改定を指示したところであります。
社会保険への加入促進についても、業界団体とともに取り組んでまいります。
また、将来にわたる建設事業の安定的な見通しを示すことや、誇りを持って仕事に取り組めるようにすることも必要であります。
今後とも、昨年成立しました改正品確法等の的確な運用とあわせて、建設業における担い手の確保、育成にしっかり取り組んでまいります。(拍手)