福島の大規模製造拠点
26年度から本格的に供給
政府、早期普及へ方針
政府は、福島県浪江町にある国内最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)について、2026年度から本格的な水素の供給を始め、商用化を進める方針を示した。国や県、電力会社などでつくる「福島新エネ社会構想実現会議」が12日、福島市で開いた会議で決めた「加速化プラン」に盛り込まれた。脱炭素社会の実現に向け、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の早期普及が期待されている。
政府は、福島県全体を新エネルギーの先進地域にするため「福島新エネ社会構想」を16年に策定。21年の同構想改定で再生可能エネルギーと水素を柱とし、官民が連携して取り組んできた。FH2Rは20年3月に浪江町に開所。水素の製造や供給技術を確立するための実証実験を進めている。
「加速化プラン」は水素供給などに関する目標時期を明確にして脱炭素に向けた技術開発をさらに進める狙いがある。
具体的には、26年度からFH2Rを活用した本格的な水素供給の開始をめざすと明記。必要な支援策などの調査を行った上で、関係機関と連携して運営主体の議論を加速させ、早い時期に一定の方向性を得るとしている。
また、水素で走る燃料電池自動車(FCV)やバスに加え、開発が進みつつある燃料電池トラックなど、新たな水素モビリティー(移動手段)の導入推進も明示。これらの乗り物に水素を充塡する「水素ステーション」を30年までに県内20基に設置する目標も示した。
このほか、薄くて軽く、曲げることもできる、次世代の国産技術として期待される「ペロブスカイト太陽電池」の研究開発を推進し、福島県内の公共施設などでの先行的な活用も含めて検討する。福島県内の再エネ導入拡大に向け、24年度までに新たな共用送電線の整備を着実に実施することも示されている。
東京電力福島第1原発事故で深く傷ついた福島の再生には、福島県を未来の新エネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とすることが重要と考え、「福島イノベーションコースト構想」を提唱・推進してきた。
その結果、今回、世界最大の水素イノベーション拠点とする「水素社会」と、ぺロブスカイト太陽電池など次世代再エネの取り組みを加速する「再エネ社会」を2本柱とした「福島新エネ社会構想」の取り組みの目標時期を明示した「加速化プラン」が策定されることは、真の福島再生に向けた大きな前進だと高く評価したい。
公明党は、福島県が新エネの技術開発や人材育成の「トップランナー県」として、日本の「脱炭素社会」の実現をけん引できるよう全力で支援を続けていく。