ホームドア整備進む
都営地下鉄の設置率100%に
2次元コードで低コスト化
駅のホームからの転落事故防止へ、公明党が推進し全国で整備が進む「ホームドア」。東京都では今年2月、都営地下鉄が2次元コードを使った方法も用いて設置率100%を実現した。ホームドア設置の低コスト化にもつながる取り組みを追った。
■浅草線、当初予定の20億円→270万円
都営地下鉄浅草線の本所吾妻橋駅。ホームに入ってくる電車のドアには日常生活でよく目にする「2次元コード」が貼られている。ホームの天井近くには3台のカメラが設置され、2次元コードから車両やドアの数などの情報を読み取ることで、各列車に合わせてホームドアが開く仕組みだ。 この方式は、都交通局が民間企業と共同で開発。都交通局によると2次元コードを使ってドアを開閉する技術の導入は“世界初”だという。 都営地下鉄は2000年からホームドア設置を進め、19年度までに3路線で整備を終えた。ただ、残る浅草線は都営を含む五つの鉄道事業者が相互乗り入れし、車両編成やドアの位置なども異なり、車両の改修が必要になる。このため、費用面などで各社との合意が得られず、計画が進まずにいた。 そこで都交通局が目を付けたのが2次元コードだ。必要な情報を入れたコードをカメラで読み取り、ホームドア側で対応することで、車両側の改修が不要になり、低コスト化が可能となった。 浅草線を走る各事業者の車両のうち、都営地下鉄のものだけを見ても、約20億円を見積もっていた車両の改修費が、2次元コードの印刷などの費用270万円へと大幅に削減できた。各事業者の費用負担もわずかになるため、合意が取れ、今年2月には、都営地下鉄全線でホームドア設置率が100%になった。 今回の方式の開発に携わった都交通局の岡本誠司さんは、「ホームドアが安全のために役立つことは分かっていても、費用面で整備が進まないところもある。(同方式が)課題解決の一助になれば」と語る。 同方式は、JR東海など他の鉄道事業者でも導入が進んでおり、国土交通省の担当者は、「低コスト化につながる好事例の一つ」と評価する。
■技術的な課題解決へ/都議会公明党の提案で「検討会」
都議会公明党(東村邦浩幹事長)は、駅ホームドアの設置について、21年都議選の重点政策の一つとして掲げた「チャレンジ8」に盛り込むなど、粘り強く推進してきた。その結果、13年度末時点で30.1%だった都内の鉄道駅のホームドア設置率は、22年度末には51.6%まで向上した。 今年度中にJR・私鉄の14駅でホームドアが新設される見込みで、来年度は都の補助制度を活用し、18駅で整備が進む予定。12日の都議会予算特別委員会で、公明党の松葉多美子議員の質問に都側が答弁した。 また、ホームドアの整備が進まない背景には、ドア位置の異なる車両への対応など“技術的な課題”があることから、公明党は21年2月の都議会代表質問で、課題解決に向け、都と事業者による検討の場を設けるよう提案。同年に「検討会」が立ち上がり、昨年3月に対応策がまとめられた。 同月の都議会予算特別委員会では、一層の整備促進を求める公明党に対し、都側が、こうした技術的な対応策と財政支援を両輪として、事業者に整備計画の充実・前倒しを求めると答弁していた。
■(政府目標)25年に全国計3000カ所/公明、補助率アップなど実現
全国の鉄道駅のホームドア設置状況は、22年度末で1060駅・2484カ所に上っており、政府は25年度までに3000カ所まで拡大するとの目標を掲げている。 ホームドアについては、公明党が推進した「交通バリアフリー法」(00年)や「新バリアフリー法」(06年)で新設の鉄道駅への設置などが義務付けられ、その後も国会議員と地方議員が連携して、国や自治体で整備促進への予算確保などを強力に進めてきた。 20年11月には、衆院国土交通委員会で公明党の岡本三成氏が、ホームドアの整備加速に向け、鉄道事業者の財政負担が障害になっているとして、国の補助制度を拡充するよう要望。当時の赤羽一嘉国交相(公明党)が「予算獲得に頑張りたい」と答弁した。こうした訴えを受け、22年度から、市町村がバリアフリー基本構想に位置付けた鉄道駅については、3分の1だった国の補助率を2分の1に引き上げるなど、整備への支援充実が進んでいる。