税制改正大綱、公明の主張が反映
高校生の扶養控除を維持
赤羽税調会長に聞く
自民、公明の与党両党は20日、2025年度与党税制改正大綱を決定しました。公明党の主張で盛り込まれた内容や改正のポイントについて、公明党の赤羽一嘉税制調査会長(副代表)に聞きました。
――今年の税制改正で意識した点は。
赤羽税調会長 日本経済は、長いデフレからの脱却が見えてきた一方で、多くの国民が物価高に苦しんでいることから、所得を向上させ家計を温める税制となるよう熟議を重ねてきました。
また、公明党の提言を反映した、政府の「こども未来戦略・加速化プラン」によって少子化対策が進められていることを踏まえ、党として子育て支援に関連する税制の強化を主張してきました。
――公明党の主張が実った点は。
赤羽 高校生年代(16~18歳)の扶養控除の見直しがテーマの一つでした。現行では所得税が1人当たり38万円、住民税が33万円です。児童手当の拡充に伴い昨年の税制改正で縮減が提起され、今年で結論を得ることになっていました。
公明党は、この年代は教育費の支出がかさみ、児童手当があっても家計が苦しい実情を踏まえ、扶養控除を縮減させずに維持すべきだと強く主張。その結果、現行制度の維持が決定しました。15歳以下を対象とする年少扶養控除の復活を求める声も多く、大綱に明記した「子育て世帯の負担への配慮といった観点」から、各種控除のあり方について議論を続けていきます。
特定扶養控除、収入要件150万円に拡充
――年収「103万円の壁」が大きなテーマになりました。
赤羽 「103万円の壁」には二つあります。一つは、19~22歳の子どもがいる親の税負担を軽減する特定扶養控除に関する壁で、子どもの年収が103万円を超えると扶養から外れて税負担が増えるため、学生アルバイトの働き控えにつながると指摘されています。こうした現状を踏まえ、25年から子どもの収入要件を103万円から150万円に引き上げることとしました。150万円を超えても、いきなり控除がなくならないよう、段階的に減らす仕組みを設けます。
もう一つが所得税が課され始める、課税最低限としての壁です。先の衆院選の民意を踏まえ、所得税の基礎控除などの引き上げに向け、与党両党と国民民主党の3党で計6回にわたって協議を行いました。
例えば、諸外国が基礎控除の基準とする消費者物価指数(総合)は、最後に基礎控除が引き上げられた1995年と比べると10%上がっていますが、これを基にすると小幅な引き上げにとどまってしまいます。そこで、食料など生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価の上昇率が20%であることを根拠に、基礎控除を48万円から58万円、給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円、合計で20万円引き上げ123万円とすることで決定しました。
「年収の壁」引き上げ、今後も誠実に協議進める
――国民民主は178万円までの引き上げを要求していました。
赤羽 自民、公明、国民民主3党の幹事長間で今月11日、「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」ことで合意しており、公明党としても家計の可処分所得の底上げへ、引き上げは重要だと考えています。
ただ、178万円に引き上げるためには毎年約8兆円の財源が必要となり、その確保が困難である上、地方自治体の大幅な減収で行政サービスの低下につながる懸念もあります。そのため今回の改正では、あくまで第一段階として123万円に引き上げました。20日には3党の幹事長間で11日の合意内容について「引き続き関係者間で誠実に協議を進める」とした確認書を交わしています。
――防衛力整備のための財源確保も今回の改正の主要項目でした。
赤羽 防衛力整備のための財源確保策を巡って、2023年度大綱では所得税、法人税、たばこ税の引き上げを「複数年かけて段階的に実施する」としていました。安定的な防衛財源の確保は重要である一方、家計を温める政策を検討している中、政策の整合性の観点で問題があるとして、公明党が「所得税の引き上げは実施すべきではない」と強く主張。これにより所得税の引き上げ開始時期の決定は見送ることとなり、来年以降に引き続き検討します。
また、法人税は26年4月以降、税額に4%の税率を付加しますが、課税標準となる法人税額から500万円を控除する措置により、中小企業の9割以上は対象外となります。たばこ税は、26年4月から加熱式たばこの税率を紙巻きと同率に引き上げ、27年4月以降、3回に分けて毎年1本当たり0.5円ずつ上げることになっています。