経済産業省は、福島第1原発事故の賠償対象が広がったことなどから、東京電力に対する支援を7000億円増額し、総額約3.2兆円にすることを決めました。東京電力は、この政府の決定を受け2013年3月期の連結決算の業績予想を下方修正。税引き後利益の赤字は1200億円で、昨年10月時点に予想した450億円から大幅に悪化するのは確実になった。
これは、原発が再稼動できないうえ、円安から火力発電用燃料の購入費用がかさむなどするためだが、このままでは同社の再建計画にも影響を与えるのは必至と見られています。
政府による追加支援は3回目。3兆円を超える総額は、大阪府の年間予算規模とほぼ同水準。現行の賠償は政府と電力各社で設立した「原子力損害賠償支援機構」が5兆円を限度に立て替えて被害者に支払い、東京電力が黒字になってから機構に返済する仕組みになっているが、事故そのものが収束せず、除染作業も思うように進まないこともあり、東京電力は昨年11月に「賠償総額は10兆円以上になる可能性もある」、国に費用負担を求めてもいる。
しかし、東京電力への風当たりは依然強い。政権交代後も東京電力と国の賠償をめぐる協議はとどこおりがちで、賠償機構の幹部ですら、再建計画(総合特別事業計画)の見直しに言及している。さらに、原子力規制委員会が策定した原発再稼動に向けた安全基準の骨子案には、東京電力柏崎刈羽原発と同型の原発には、放射性物質を除去するフィルター付きベント(排気)装置の建設の義務化が盛り込また。東京電力が経営再建の切り札と期待している柏崎刈羽原発の再稼動は遠のいた形だ。勢い、電力料金の値上げでカバーする案が浮上するが、昨年9月に家庭向け料金の値上げをしたばかりで、原油高などによって自動的に転嫁する以上の値上げは、難しいのが現状です。
経済ジャーナリストは「政府内部にすら、『賠償がどこまで広がるか、見極めができない状態が続いている。支援スキームの見直しも視野に入れないと、モラルハザードに陥るのではいか』という声がある」と指摘する。現状は、客観的に見て原発の再稼動や電気料金への転嫁がすんなり認められる可能性は低い。広瀬直己社長は「合理化に取り組んでいかなくてはならない」というものの、経済ジャーナリストは「『まだ無駄が多い』と各方面から指摘されているのが現実。経営陣がどこまで危機感を持っているかだ」と手厳しい。東京電力にとっての本当の正念場はこれからのようです。