◆中国船のレーダー照射で横並びの主張

沖縄・尖閣諸島周辺の東シナ海で依然、緊張が続いている。政府の国有化以後、中国の海洋調査船の領海侵犯、中国航空機の領空侵犯が報じられない日がないような状態です。

その中でも、驚かされたのが1月30日に起きた中国海軍のフリゲート艦による日本の海上自衛隊の護衛艦に向けた射撃管制用レーダー照射だ。当然、在京各紙は社説でこの問題を取り上げ、中国の行動を厳しく批判しました。

各紙の社説はおおむね同じようなものだった。

①   険な挑発行為

②   一歩間違えば軍事衝突発展しかねない

③   日本政府の中国への抗議は当然

④   中国に自制を求める――といった主張は、若干の濃淡の差はあれ、ほぼ横並び。事前に打ち合わせをしたかのような印象だった。

レーダー照射が明らかになった翌日(6日)に社説を掲げたのは産経と朝日。「右と左」「タカとハト」といった比較されることが多い両紙だが、今回の社説ではそう大きな差はなかった。あえて挙げるならば、産経が「断固たる対抗措置をとるとともに、万全の備えを固めなければならない」「自衛隊や海上保安庁による警戒監視活動強化と併せ、不測の事態への備えを怠ってはならない」と実力での防衛強化を主張したのに対し、朝日は「まずは危機回避のためのチャンネルづくりを、日中両国政府は急ぐべきだ」と、両国の意思疎通をするための工夫を求めたことにある。また産経は、他紙がその後、この問題を取り上げていない中、9日朝刊で、この問題を国連に提起することを求める社説を掲載しています。

1日遅れの7日朝刊で扱った残る4紙も大同小異だった。各紙独自の主張と思われるのは「尖閣諸島周辺の日中の緊張関係がより危険な段階に入ったと覚悟する必要もある」(読売)、「不測の事態回避のための『海上連絡メカニズム』構築に向けた日中防衛当局間の協議再開を中国側に求めることも必要だろう」(毎日)、「中国指導部内部で何が起きているのか、正確に見極めなければいけない」(日経)、「あくまでも外交ルートを通じた冷静な対応に徹してほしい」(東京)という部分だろう。

週刊誌の見出しは、「日中開戦前夜」であるかのような刺激的なものが目に付く。新聞各紙の社説が一様になるのは決して好ましいことではない。一歩間違えば、戦前の「鬼畜米英」でならんだ大本営的報道になってしまいかねない。中国の姿勢を不快に思っている国民は多いのは事実だろう。それだけに、ステレオタイプのような主張でなく、丹念な取材と冷徹な観察をベースにした創造的な主張を盛り込んだ社説が読みたいと思います。