今年上半期の最大の政治イベントである米中首脳会談が行われた。オバマ米大統領がワシントンでなく、カリフォルニア州の保養地に習近平・中国国家主席を招いたことや、会談が2日間約8時間に及んだこと、さらに習主席にとっては就任3カ月足らずの訪米で、胡錦濤・前主席の2年半後に比べ異例に早かく、世界中のマスコミが「異例づくめ」と評した会談だった。
在京各紙にとっては、新聞休刊日と重なったため、社説の書き方に工夫が必要だった。毎日と産経は休刊日を挟む9日と11日の2回に分けて掲載。他紙は11日に回し、東京は大型社説で論じた。しかし、会談内容の詳細が明らかになっていないことあり、各紙の社説も今ひとつ突っ込み不足の印象だった。
会談を好意的に論じたのは毎日、日経の2紙。毎日は「会談で浮かび上がったのは、軍事と経済という二つの分野で摩擦の高まる両国の、対立回避の模索だ」と評した。両国への注文も控えめで、見出しも「責任ある『大国関係』に」と穏やかだった。日経も「最大の力点は、さまざまな懸案について米国や関係国の懸念を習主席に伝え、トップダウンで改善に取り組むよう迫ることにあった。その意味では、ひとまず当初の目的は達したといえよう」と及第点を付けた。
これに対し、中国に注文を付ける印象が強かったのが、朝日、読売、東京。朝日は「今回の会談は中国への国際社会の懸念を払拭するものとは言い難い」と指摘。「大国にふさわしい、責任ある振る舞いを望む」と結んだ。読売も「米国と対等の共存関係を主張するなら、それに見合った責任ある態度が求められる」と強いトーンだった。東京も「中国は、利害が対立する問題で独善的な態度をとり続けることをやめ、国際社会の一員として責任を積極的に果たすべきだ」と主張した。
この5紙に比べニュアンスが違ったのが産経。9日の社説は「太平洋は2大国の空間か」と見出しを付け。軍事的にも経済的にも他を圧する両国が「世界支配に向かうことがあってはならない」と頭越しに両国が「棲み分け」することに不快感をにじませた。習氏の「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」との発言を重視し、太平洋進出をうかがう中国の姿勢に警戒感を示した。これは尖閣諸島問題を取り上げた11日の社説にもつながった。米中会談での尖閣をめぐるやり取りを詳報した形で、中国の一連の行為と発言を「挑発」を難じ、首脳会談でオバマ大統領が中国の姿勢を批判しなかったことを「残念だ」と評した。
中国をどう論じるかは日本のマスコミにとっては悩ましい問題の一つ。今回の米中会談の評価もその一面をうかがわせた。