◆減反政策に終止符

政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」(本部長・安倍晋三首相)は、減反(コメの生産調整)を2018年度に廃止することを正式に決定した。農業を取り巻く環境が大きく変化していることや、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉をにらんだものだ。減反は約半世紀の間、日本のコメ政策の基本になってきたもので、実現すれば農業政策の大転換になるが、なお不透明な部分ものこっており、抜本的な農政改革のハードルは高い。

同本部がまとめた新たなコメ政策は、①生産調整は2018年度に廃止②減反農家への定額助成金(10㌃当たり105000円)は2015年度から2017年度までの間、半額に減額③2014年度に農地を守る活動支援のための新たな交付金「日本型直接支払い」を創設する④飼料用米などへの転作を促す補助金の拡充――などが柱になっている。

減反の歴史は長い。源流は戦時中に制定された食糧管理制度にさかのぼる。「国民に主食であるコメを提供するのは国の責任」という考え方だ。生産から流通までを国がコントロールするため、生産量が消費量を大幅に上回れば、生産量を減らす(減反)ことが必要で、1970年に本格導入された。しかし、その食管制度も1995年に廃止され、減反も作付けしない面積の割り当てから、生産目標を配分するシステムに変わったが、国際価格との格差などの圧力もあり、生産調整方式が廃止されることになった。

政府関係者は、今回の政策変更について「農家が需給関係などを考えて生産量を決めるシステムだ。自由競争の時代に入ったことになる」と説明する。このため政府は、詳細なコメの需給情報を公表し、生産者や農業団体が判断する材料を提供することにしている。

しかし、狙い通りに政策転換を進めるには解決しなくてはならない問題も多い。政府は主食用から飼料用への転作を促す方針だが、飼料メーカーの多くは輸入米を原料にするシステムになっており、資料用米の保管場所など整備は進んでいない。自民党内からは「そもそも飼料用米の買い手はいるのか」という声も聞こえてくる。

農業ジャーナリストは「一歩前進だが、農魚をめぐっては、担い手の高齢化、企業の参入を認めないなどの規制の多さ、農協組織の肥大化など、難問が山積している。減反政策を廃止すれば農業が再生するというわけではない。あくまでも入り口に過ぎないことを肝に銘じるべきだ」と辛口だ。