◆5兆円を超す消費者被害額

誇大広告などの悪質商法により、2013年に消費者が受けた被害総額が5兆7000億円になるという推計がまとまった。消費者庁が公表したもので国内総生産(GDP)の約1%にあたる。消費者庁は今後も推計の精度を上げるなどして実態把握を進め、悪質商法を防ぐ有効な対策を講じる材料にする方針だ。

推計のベースになったのは、今年1~2月にかけて行った消費者庁の調査。全国の15歳以上の男女1万人を対象に、過去1年間に消費者被害を受けたかどうかを調べた。有効回答は65.7%。

調査結果によると、何らかの被害を受けたと回答した人は7.5%。被害を受けた割合を年齢、性別にみると、60歳未満では女性の方が多く、60歳以上では男性の方が多くなる傾向がわかった。また、年代別では50歳代の割合がピークだった。ただし、消費者庁では、高齢者は自分が被害を受けたという認識が低い可能性があるため、実際には高齢者の被害はもっと多いとみている。

被害内容は最も多いのが「機能・品質が期待よりかなり劣っていた」(50%)で、「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり劣っていた」(21%)「思っていたよりかなり高い金額を要求された」(8%)の順だった。

被害金額は、支払い金額が1万円未満が48%、1万円以上が37%だった。

これらの結果から消費者庁は、全国で被害を受けた人を940万人、被害総額を5兆7000億円と推計した。このデータは消費者庁の有識者による検討会で示された。来年以降も被害額の算定を続け瑠ことにしている。

消費者被害については、消費者庁設置前の2008年に内閣府が実施しており、その時の推計被害総額は最大約3兆4000億円だった。調査方法が違うとはいえ、5年間で1.7倍にも膨らんだことになる。

ジャーナリストは「悪質商法は手を替え、品を替え、高齢者をターゲットにしている。最近ではフードファディズムと呼ばれる、食品を扱うものもあり、すそ野が広がっている印象だ」と指摘する。フードファディズムとは「これを飲めば無理なくやせられる」「美容にいい」などと誇大に商品を宣伝するだけでなく、「この食品を食べないと大病になる」などと消費者を不安にさせ、買わなければいけないかのような錯覚を起こさせるものもあるという。

諸外国でも同様の消費者被害は報告されているが、ジャーナリストによると「先進国では被害総額はGDPの1%未満といわれている」という。消費者行政の遅れは、かねてから指摘されていたが、被害額推計は改めて、日本の消費者行政の不備を指摘しているといえそうだ。