世帯主が65歳以上の「高齢世帯」が2035年には全体の4割を超え、そのうちの4割弱が一人暮らしというショッキングな統計結果が公表された。国立社会保障・人口問題研究所のまとめた「世帯数の将来推計」で、今後社会構造が大きく変化していくことを浮き彫りにしている。社会保障の仕組みに限らず、消費構造など経済にも大きな変革を迫る可能性がある。
この「世帯数の将来統計」は、2010年の国勢調査に基づき、都道府県別に5年後との世帯数を推計した。
2010年に5184万世帯だった世帯数は、2020年の5305万世帯をピークに減少に転じ、2035年には4955万世帯になる。「高齢世帯」が全世帯に占める割合は、2010年に31・2%だったが、2035年には40.8%に跳ね上がる。都道府県別にみれば、秋田県は52.1%になる。全世帯の半数以上の世帯主が65歳以上の高齢者なのだ。75歳以上高齢者が世帯主の世帯も増加し、20%を超えるのは45道府県。日本のほぼ全域が該当する。
この「高齢世帯」をさらに分析すると、独居世帯が2035年には37.7%(2010年30.7%)を占める。都道府県別では、山形以外の46都道府県で30%以上になる。世帯全体でみても一人暮らしの割合は年々増加、2025年には全都道府県で一人暮らしの割合が最多になり、2035年には37.2%に達する。
こうした中で、深刻化しそうなのが、首都圏など都市部での「高齢化」だ。地方から就職などで東京に出てきた団塊の世代が、配偶者と死別するなどして一人暮らしになる可能性が高いからだ。東京都の「独居高齢者」は2010年が64万7000人だが、2035年には104万3000人になる。こうした「高齢世帯」「独居高齢者」の急増は、社会の各方面に影響する。
社会保障でみれば、現在は、医療、介護で「在宅のすすめ」が唱えられているが、家族で高齢者を支えられないケースが急増することが予想される。「独居高齢者」の増加により、孤独死が増える心配も指摘されている。
高齢社会の研究者は「日本はこれまで地方で高齢化が進んだ。しかし、都市部での高齢化は、これまでとは質的に違うのではないか。地域コミュニティーのない都市部では、行政が積極的にかかわらないと高齢化に備えることができない」と指摘する。ジャーナリストは「必要以上に恐れることはないが、何も手を打たないと、大変なことになる」という。本格的な備えが必要になっている。高齢社会は待ったなしなのだ。