財務省は2013年度の貿易統計(速報、通関ベース)を発表した。それによると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は13兆7488億円の赤字だった。赤字額としては過去最大で、2012年度の8兆1577億円から68.5%増え、初めて3年連続の赤字になった。円安、輸出不振、燃料費の増加などいくつもの原因が重なった結果とみられる。一方で生産拠点の海外移転などで日本経済の空洞化の反映という指摘もある。
輸入額は84兆6053億円で、前年度比17.3%増。4年連続の増加でこれも過去最大。円安が進み、平均レートが1㌦=99円97銭という前年より約20%の円安ドル高だったことが背景にある。原発の稼働停止で火力発電の燃料である液化天然ガス、原油の増加も輸入額を膨らませている。
一方、輸出は70兆8564億円で3年ぶりに増加。2012年度比では10.8%の増。自動車が米国向けを中心に15.9%増えたことなどが目立った。
貿易赤字が最大になったことをどう見るか。経済ジャーナリストは「貿易収支だけでその国の経済を見るのは意味がない。重商主義の時代ではないのだから、赤字=悪ではないことを認識すべきだ」という。
そのうえで、今回注目すべきこととして「日本経済空洞化」を指摘する。象徴的なのが対アジアとの貿易収支だ。2010年度に9兆8256億円の黒字だったのが、2013年度には8758億円にまで減少している。3年間で約9兆円の黒字が消えているのだ。ジャーナリストは「明らかに製造業の生産拠点が海外に移転したことが影響している。それだけでなく、アジアの製造業との競争で日本が遅れを取っていることも見逃せない」という。スマートフォンなど通信機の中国からの輸入は金額で33.1%増の2兆1019億円。無視できない数字になっている。日本の輸出の主役であるはずの自動車も、その部品調達がアジアからの輸入が増えているのが現実だ。
いったん低下した輸出力の回復は簡単ではない。海外に移転した生産拠点が国内に戻るためには、海外移転した原因が解消されなければならないからだ。デフレ、円高、政府による各種の規制、高い法人税……など原因は少なくない。安倍政権は成長戦略でこれらを改革しようとしているが、その足取りは重いというのが大方の共通認識だ。
別の経済ジャーナリストは「日本企業のビジネスモデルも変わりつつあるのではないか。輸出入に左右される製造業から、投資を含め広い意味でのサービス業的な形が強まっている」という。貿易赤字は当分続くとみられるが、それは日本経済の在り方が変わることを暗示しているようにも見える。